小さな恋 大きな恋
09
「ねぇ、リョーマ。本当に転校しちゃうの?」
英二の誘いを断った日の帰り、友達と帰ってる途中で友達の1人で少し茶色が混じった髪をポニーテールにしている子が尋ねてきた。
「うん。今月までしかここにいられないんだ。」
「それ本当に確かなの?」
今度は違う友達が尋ねてきた。その子は黒髪のロングヘアーの子だった。
「うん、お母さんが1週間前にどうしてもアメリカに戻らなきゃならない仕事ができたんだって言ってたから。」
「そっかー。お母さんの仕事じゃ仕方ないわよね。残念だなー、折角リョーマと仲良くなったのに。」
また別の友達で黒髪のショートヘアーの子が言った。
「でも、リョーマがアメリカ行っても私達ずっと友達よ。」
最初に尋ねた友達が言ったら残りの2人も頷いた。
「ありがとう。でも、私がどうしてもここにいたいって言うのなら国光の家に預かってもらうよって朝言ってた。でも国光のお家に迷惑が
かかるからまだ考え中。」
「本当?!じゃあ、もしかしたらここにいれるかもしれないんだね。」
「うん。」
「でもリョーマが私達に相談してきた時はびっくりしたなー。」
「そうそう、私達とリョーマって席が近いだけであんまりしゃべったことなかったもんねー。」
「迷惑だった?」
リョーマが少し不安そうに聞いてきたので慌てて3人共首を振った。
「そんなことないよ!」
「ただびっくりしただけで。」
「だって、私が転校して来た時にやさしくしてくれたから。」
「そんなの当たり前よ。」
「それにリョーマってばこんなに可愛いんだもん。ついつい構いたくなっちゃうって感じ。」
「可愛くないよ。」
「えー可愛いよー!」
「そうそう!他の男子もリョーマ狙いの子とかいるけど手塚君達が一緒にいるから諦めてるみたいだし。」
「・・・・・・・。」
「こらっ!それ言っちゃだめよ。」
「あっ!ごめんね、リョーマ。」
「ううん、大丈夫。気にしないで。」
リョーマは苦笑いで返事をした。
「ねぇ、リョーマ。手塚君のこと好きなんでしょ?」
「・・・うん。」
「手塚君に言わなくていいの?」
「・・・・・・・・。」
「私達から見ても両思いなのに。」
「そんなのわかんないよ。」
「リョーマ、もっと自身持ちなよ。」
「そうそう。じゃあ、手塚君に告白して両思いだったら日本にいるっていうのは?」
「あっ!それいい!!」
「どう?リョーマ。」
「うん、そうする。ありがとう皆。」
「いいのよ。いつでも相談してね。」
「明日の昼休みは手塚君達といなよ。菊丸君がうるさいから。」
「あはは!言えてる〜。」
「リョーマが行ってあげないと不二君がキレかけだし。」
「ホントホント。」
「わかった。明日は国光達といるよ。」
「また一緒におしゃべりしようね。」
「うん。」
そこで十字路にぶつかると、
「じゃあ、あたしこっちだから。」
ショートヘアーの子が右を指しながら言った。
「私もこっちだから。じゃあね。」
リョーマも左を指しながら言った。
「あっ、リョーマ!」
ロングヘアーの子がリョーマを呼び止めた。
「ん?」
「告白はまだしちゃダメよ。ぎりぎりまで考えて。」
「うん、わかった。ありがとう。」
「じゃあ、また明日!」
「バイバイ。」
「明日ねー。」
「うん、バイバイ。」
3人がリョーマに挨拶をし、リョーマも3人に挨拶をするとショートヘアーの子は右に、残りの二人はまっすぐ、リョーマは左へと進み、自
分の家へと足を進めた。
10
次の日の朝、いつも通り手塚とリョーマは一緒に学校へ行っていると、リョーマが手塚に話かけてきた。
「ねぇ、国光。今日私も保健室行っていいかな?」
「ああ、かまわない。」
手塚は驚きながらもリョーマに返事した。リョーマは「ありがとう。」と言って嬉しそうに隣を歩いていた。
手塚はリョーマが今日はため息をついていないことに気付いたがあえてリョーマに何も言わなかった。
お昼休みに手塚と不二と乾とともにやってきたリョーマを見て菊丸は大はしゃぎだった。
休み時間中リョーマにくっついて離れなかったのだ。それを見て3人は苦笑したがリョーマが楽しそうだったのでしょうがないという風だ
った。
この日の帰りは、倫子が手塚家へ遊びに行っていることもあって手塚とリョーマは一緒に帰ることになっていた。
「国光と帰るの久しぶりだね。」
「そうだな。」
たわいもない話をしながら歩いていると手塚がふとリョーマに尋ねた。
「リョーマ、悩みごとは解決したのか?」
「え?」
手塚の質問にわけがわからないといった顔のリョーマに手塚が最近のリョーマの様子を言った。
「最近ため息ばかりついていたのでな、何か悩みごとでもあったのかと思ったんだが。」
「そんなにため息ばっかりついてた?」
「自分で気付かなかったのか?」
「うん。国光、心配してくれてたの?」
「まぁな。」
「そっか、ありがと。大丈夫だよ。」
「そうか、それならいいが。」
「うん。あ、国光の家見えてきたよ!」
「こけるなよ。」
リョーマが手塚の家が見えてきた途端走り出したので手塚は苦笑しながら注意した。
「わかってるよ!」
リョーマは手塚の言葉に怒りながら家の前で手塚が来るのを待った。
そして2人一緒に手塚家へと入っていった。
中では2人の母親が我が子の為にお菓子を作っており、そのままおやつの時間となった。
あやつを食べている間リョーマが学校でのことを話したり母親達が質問したりたまに手塚も会話に参加したりして賑やかに過ごした。

